The King's Museum

ソフトウェアエンジニアのブログ。

『給料はあなたの価値なのか -賃金と経済にまつわる神話を解く』を読んで

『給料はあなたの価値なのか -賃金と経済にまつわる神話を解く』を読みました。

この本は給料に関して世間で広く信じられている『給料はその人の市場価値や個人の仕事の成果によって決まる』ということは神話だと断言する。

内容は下記の書評に譲るとする。よくまとめられていてすごい(小並感)。

huyukiitoichi.hatenadiary.jp

けっこう eye opener なことがたくさん書かれていた。

現代において給料に関しては経営者(使用者)側がいかに有利な立場にいるかが強く主張されている。 たとえば、労働者はお互いの給料を知らないことが多く、公平な市場原理を説くことが多い経営側の人間はその点で矛盾している(価格が公開されない市場は公平ではない)。 他にも、シリコンバレーの巨大 IT 企業がエンジニアの引き抜きを禁止しあう密約を結んでいたことは記憶に新しい(これも明らかに公平な市場ではない)。

自分は給料は市場価値に基づくという神話を信じていたけれど、この本を読んだあとは本書で述べられている四つの要因(権力、模倣、慣性、公平性)の方が深く関わっているなと思った。 逆にいうと自分の給料を守っていくという意味でこれらの要因を知ることができたのはよかったのかもしれない。 無邪気に市場価値や個人の成果をあげていても給料には結びつかない。

よく言われる「賃金の上昇と引き換えに雇用が守られている」というのもどうやら神話のようだ。 そういう人的資本モデルや市場原理モデルを脱した新しい給料に関する理論が書かれていたのでおもしろかった。 あと、やっぱり労働者としては労働組合があったほうが多くの点で有利だよね、というのは納得だった。

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