The King's Museum

ソフトウェアエンジニアのブログ。

『スーパーエンジニアへの道 - 技術リーダーシップの人間学』を読んで

明けましておめでとうございます。

2021 年、一発目の読書は『スーパーエンジニアへの道』。

『ライトついてますか?』や『コンサルタントの秘密』などで有名なワインバーグが技術リーダーシップについて書いた本。 邦題はやや誇張されているところがあって、原題は Becoming a Technical Leader: An Organic Problem-Solving Approach。 こちらの方がより内容に近い。

5 年くらい前に一度読んだことがあったのだけど、もう一度読み直したいなと思って新年一発目に読み直した。 ちょうど仕事を変えたのもきっかけの一つかな。 今まで読んできた本の中でもけっこう印象に残る本だったので覚えていることもあったけど、やっぱり忘れていることが多かった。

今回は、以前読んだときよりも「なんだか冗長でまわりくどいなぁ」と感じた。 直球で分かりやすく語るのではなく、例や比喩を用いて回り道をしながら読者を議論に巻き込んでいく。

彼の本(ワインバーグの本)を一気に読みすることはむずかしい。 一つ一つの章が、ちょうど彼の掲げる逸話がそうであるように、何重もの意味を持っているからだ。 何度も何度も私は、立ち止まって考え込んでいる自分に気づく。

「推薦の辞」より

確かに『ライトついてますか?』もそんな感じだったな~。

MOI モデル

この本では、MOI モデルというものを使って技術リーダーシップについて議論する。 技術リーダーはこれらを用いてリーダシップを発揮していくという。

  • 動機付け(Motivation)
  • 組織化(Organization)
  • アイディア or イノベーション(Idea or Innovation)

技術リーダーは最後の「アイディア or イノベーション」を使ってリーダシップを発揮しているケースが多い。 「ものごとをよりよく行うための方法」を開発することでリーダーシップを発揮する。 誤解を恐れずに言えば「あの人は技術力があるね」ってやつがそれに近いのかもしれない。

ただ、動機付けや組織化について忘れてはいけなくて、これらが足りないと苦労する場面も出てくる。 自分がこの3つのうちどの要素に重点を置いてリーダシップを発揮しているのか、自分に足りない要素はどれかという点を意識するとさらによいリーダーシップが発揮できるのかもしれない。

詳細が気になる人は本書を読んでいただければと思う。

技術リーダーになりたいのか

というわけで、この本には長々と技術リーダーシップについて書かれているのだが、最後で「本当に技術リーダーになりたいのか」と読者に疑問を投げかけてくる。

そのうえ「もしなりたいなら、なるべきじゃない」と述べる。

もしあなたが何かをそんなにほしいと思うなら、多分あなたはそれをもらわない方がいい

おそらく読者は技術リーダーシップを身につけたくてこの本を買うのに、最後にこんなことが書かれているなんて。

かくいう自分もその一人で、5 年前に始めてこのオチを読んだ時は「なんだこりゃー」って思ったけど、今考えると「確かにそうかも」と思うところもある。 物事に執着しているときはいい結果がでないとでもいうのだろうか。

当時の自分は Tech Lead のような技術リーダーになるぞーって意気込んでいろいろ頑張っていた記憶がある。 でも、あまりいい結果は出てなかったような気がする。 今は逆に技術リーダーになりたい?って聞かれたら「どうだろうな…」って悩む。 ということは、もしこの本を信じるのなら、今ようやく技術リーダーになる準備ができたのかもしれない。

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