The King's Museum

ソフトウェアエンジニアのブログ。

『ワークシフト』を読んで

ワークシフトを読みました。8月の読書。

ワークシフトは2011年に書かれた本。 未来の働き方、具体的には 2025 年の働き方について予測し、そこで起こっているであろう<シフト>について書かれている。 筆者は働き方において、これから 3 つのシフトが起こるだろうと述べている。

  1. ゼネラリストが評価される時代が終わり、高い専門性を持つスペシャリストが求められるようになる
  2. 人的関係に基づいたコラボレーションによるイノベーションが重要になる
  3. 経済的な成功と消費を求める画一的なキャリアゴールから、やりがいを求めるキャリアを築く必要がある

これら 3 つのシフトの具体例として筆者が想像した悲観的なストーリーと楽観的なストーリーが語られる。 悲観的なストーリーはこれらのシフトにうまく適応できなかった人々のストーリー、楽観的なストーリーはこれらのシフトにうまく適応できた人々のストーリだ。 そして、これらの想像上のストーリーを踏まえて 3 つのシフトをうまく乗りこなす術が書かれている。

ゼネラリストエンジニア

3 つのシフトはそれぞれ「確かにその通りだ」と感じたが、中でも特に気になったのが 1 つ目のシフト。

第一に、ゼネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直すべきだ。 世界の50億人がインターネットにアクセスし、つながり合う世界が出現すれば、ゼネラリストの時代が幕を下ろすことは明らかだと、私には思える。

どうやらゼネラリストの価値は下がっていく一方のようだ。 反面、高い専門性を持つスペシャリストが求められるようになる。

省みて自分のキャリアはどうだろうか。 自分はプログラマー/エンジニアだと思っているが、世間的には技術職にあたるわけだしある程度の専門性がある職業だと思う。

でも、ソフトウェアエンジニアとして専門性の高いスペシャリストではないと最近感じる。 職業人生はそろそろ 10 年を迎えるが、何か一つの領域を長くやってきたわけではない。 Java の GUI を書き、C++ で HPC のミドルウェアを書き、Android もやったし Web のフロントエンドもそこそこやった。 サーバーサイドもそれなりにいじれるし、インフラ構築もそれなりにできる。 フルスタックエンジニアとポジティブに呼ぶこともできるが、端的にいえばソフトウェアエンジニアの世界でのゼネラリストなのかもしれない。

ゼネラリストの価値は下がっていく。 さて、自分のキャリアは大丈夫だろうか? でも、この本にはこんなことも書かれている。

新しい時代には、本書で提唱する「専門技能の連続的習得」を通じて、自分の価値を高めていかなくてはならない。 未来にどういう技能と能力が評価されるかを知り、その分野で高度な技術を磨くと同時に状況に応じて柔軟に専門分野を変えることが求められるのだ。

専門性は高めていかなければならないが、専門領域も時代に合わせて変化させていく必要がある。 なるほど。専門性を維持しつつ求められている専門領域にキャリアを常にシフトさせていく、というのは説得力がある。

自分のキャリアをポジティブに捉えるのならば、ずっと「ソフトウェア開発」には携わってきたわけで、それを軸にして時代に合わせた技術を習得すればよいのではないか。 勉強を続けなければいけないことは大変といえば大変だけど、この仕事は今でも楽しいと思えるのでそれほど苦にはならなさそうだ(能力的な限界が先にくるかもしれないが)。 ただ、どの能力・技術が評価されるかを見極めるのはとても難しく、常にアンテナを高く立てておく必要はあるだろうし、経験を思い切って捨てるようなキャリアを選ぶ柔軟性も必要になってくるだろう。

そうやって、自分のキャリアを見つめ直した一冊だった。

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