The King's Museum

ソフトウェアエンジニアのブログ。

『イノベーション・オブ・ライフ』を読んで

今年は毎月一冊本を読もうと思い立って三ヶ月。

今月は『イノベーション・オブ・ライフ』を読んだ。

『イノベーションのジレンマ』で有名なクレイトン・クリステンセンが幸せな人生を送るための理論について語った本。

この本では企業経営に用いる様々なマネジメント理論を人生に応用する。 「〜をすれば幸せな人生を送れる」という知識を提供するのではなく、幸せな人生を分析するための理論を提供することを目指している。 言ってみれば「魚を与えるのではなく魚の釣り方を教える」というところだろう。理論によって対象を分析することをクリステンセンは『理論のレンズを通して見る』と表現する。

人生を理論のレンズを通して見てみよう、というわけだ。

キャリアについて

キャリアでありがちなミスとして報酬や地位をゴールにしてしまうことを挙げている。

報酬や地位は<衛生要因>であり、それらを満たすことで不満をなくすことはできるが仕事の満足には繋がらない。 「衛生状態が悪ければ健康を害するが、衛生状態が良くても健康を増進するわけではない」ことから付けられた名前だ。 「仕事に不満がある」の反対は「仕事に満足している」ではなく、単に「仕事に不満がない」という状態である、と述べている。

これは「動機付け理論」という理論のレンズを通して見ることで明らかになる。

また、キャリアについてのすべてをあらかじめ計画しておくことはできないし、そうするべきではないと説く。 事前に計画した戦略を意図的戦略と呼ぶが、企業経営と同様に物事が計画通りいくことはほぼありえないし、予期されないチャンスを逃す可能性が高い。 予期されないチャンスに対して扉をオープンにしておくことを創発的戦略と呼び、企業経営と同じくキャリアについても意図的戦略と創発的戦略のミックスが必要だという。

その他にも様々な理論を用い、そのレンズを通してみることでキャリアについて分析している。

感想

キャリアについては自分にもあてはまるなぁ、と思う部分も多々あり、考え方が整理されてとてもよかった。

一方、本書の残りの半分以上が人生の『プライベート』の部分(家族や地域コミュニティなど)に関して書かれているのだが、正直いまいちピンとこなかった。 どちらかといえばこの『プライベート』の部分が本書の主軸のような気もするけど、悪くいえば少し説教くさかったかし、賛同できない点もあった。

でも、キャリアについてはとても役に立ったのでその部分だけでも読むことをおすすめしたい。 今回、友達がおすすめしてくれたのでこの本を読んだのだけど、紹介してくれた友達には感謝したい。

ちなみに、原題は "How will you measure your life?" なんだけど、邦題に無理矢理「イノベーション」をいれているあたりはお約束といった感じだろうか。 「人生にイノベーションを!」みたいなイケイケな本ではないことは付け加えておきたい。

そういえば『イノベーションのジレンマ』は数年前にブログ記事にしたなと思っていたが、もう5年以上も前だった…。

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