『となりの億万長者』と『その後のとなりの億万長者』を読んだ。
『となりの億万長者』はアメリカで書かれた本で、億万長者(純資産100万ドル超え)の人びとがどういった生活スタイルをしているかを調査した本。
初版は96年なのでちょっと前で、調査自体は70年代(?)くらいからやっていたらしくけっこう内容的には時代を感じる。
『その後のとなりの億万長者』はその続編で、『となりの億万長者』の著者とその子どもが 21 世紀に入ってから再度調査を行ってまとめなおした本。
億万長者がどのような生活スタイルをしているかを描き、資産を築いていくにはどうすればよいかを記している。
データを見ていくと億万長者にはベンチャー企業の創業者や親から大金を相続した人たちは決して多くなく、堅実に収入を貯蓄し投資していった人びとが多いことがわかる。
この本で紹介されているとても大事な点として、収入の高さが資産の多さとは必ずしも比例しないことだ。
特に一部の高収入な職業に就く人々は収入を消費に回してしまいがちな傾向が見てとれる。
また、親から資産をもらって億万長者になった人は意外に多くないことが分かる。
こちらも親から経済的援助を得るとそのまま消費してしまう人が多いことが分かる。
そういう億万長者の傾向を7つにまとめている。
- 収入よりも低い支出で生活している
- 資産形成のために、時間やエネルギーや資金をうまく配分している
- 周りを気にしたり、流行を追うよりも、経済的な独立のほうが重要だと思っている
- 両親からの遺産や相続を受けていない
- 子供は経済的の独立している
- 市場のチャンスをとらえるのがうまい
- 自分に合った職業をえらんでいる
続編の方はデータが新しくなっていて 21 世紀に入ってからの調査結果が紹介されている。
ただ、前作から特に目新しいことはなくて「もう一度、調査したけどけっかは同じだった」という結論なので内容としてはほぼ同じ。
--
富を築くには収入や投資リターンはほとんど関係なく貯蓄率が大きく影響する、と以前読んだ本にも書いてあり、それとほぼ同じことが書いてあった(この本の方が元ネタだろうけど)。
thekingsmuseum.info
ある意味当り前のことしか書いてなくて、そりゃ収入の多くを数十年貯蓄して投資していったらそうなるよね、と思った。
ただ、読んでいていくつか気になる点はあった。
この本では『年収30万ドルを超えてても億万長者になれないが、年収9万ドルの人が億万長者になっている』というような例が頻繁に紹介される。
しかし、読んでいくと年収30万ドルの人も数十万ドルの資産はあることがほとんどで決して世間的に貧乏なわけではない。
だから、収入が多く、毎年のように海外旅行も行って、数年に一度は高級車を乗り換え、毎週豪華なディナーを取る生活をしていても、日本円で数千万円以上の資産はあるわけだ。
一方、年収9万ドル(おそらく最高時の年収だろう)の人は働き始めたころ(20歳前後)から貯蓄にはげみ、旅行もあまりせず、車も中古で、地価の安い地域に長年住んで、定年時にようやく資産100万ドルという状況だ。
はたして、どちらが幸せな人生なのだろうか。
本では、資産があって経済的に独立しているという人は幸福度が高い、という調査結果が合わせて紹介されている。
ただ、アメリカは公的年金が存在しないから老後のための貯蓄がないと、定年後の生活がほんとうに破綻するという不安があり、貯蓄がないことへのストレスが非常に高いのではないかと思った。
かたや、日本の場合は公的な年金制度があって、生活保護というセーフティーネットがあるわけだ。
それに、アメリカがクレジットカード大好き消費大国である一方、日本の貯蓄率の高さはいろいろなデータでも示されているわけで、あまり極端に考えなくてもいいのかと思った(本だと5年落ちの大衆中古車を15年くらい乗っている億万長者の例が出てくる)。
--
あと、出てくる億万長者の多くは60歳前後のシニア層で世界の経済成長の波にうまくのった層である。
親からの遺産がなくても自分で事業を起こして、いわゆるアメリカンドリームをつかんだシニア層のことをよく紹介している。
自分の認識だと今のアメリカの若い世代はそういう環境ではなく、以前読んだ『実力も運のうち - 能力主義は正義か』でも書かれていたように、現代のアメリカでアメリカンドリームを実現することは相当に難しい。
thekingsmuseum.info
この先、経済成長は続くのかみたいな議論もあるし、1900年代のアメリカンドリーム神話みたいなのを礼賛してる感じが強くて、ちょっと距離を置いてみておく必要がありそうだとは思った。
ただ、もちろん一般論として収入の多くを節約して貯蓄すれば資産になるというのは当たり前でそういう実例がふんだんにのっていて多少懐疑的になりつつも「貯蓄して投資するか…」という気分にはなれるので読んでみるのもいいかもしれない。
『金持ち父さん』を読むよりこの本のほうが着実に億万長者に近づけるような気もしたので、自分のようなサラリーマンは一度読んでみるのはいいかもしれない。
ただし、「となりの」の方は Kindle 版がないのが辛いが。。。