The King's Museum

ソフトウェアエンジニアのブログ。

『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』を読んで

『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』を読みました。2月の読書。

お金に困らないために

最近、子供のスイミングスクールを待ってる時間に書店をぶらぶらすることが多くて、その時に見つけた本(Kindle で買ったけど)。 FIRE とか株式投資の本がよく売れてるようで、投資関連コーナーが作られてたんだけどそこで見つけた一冊。 こういう本ってついつい手が伸びてしまうな。

金持ち父さん貧乏父さんが「お金持ちになる方法の本」であるとするなら、こちらは「お金に困らないための本」。副題にもある通りなんだけど、お金との賢い付き合い方がエッセー風に淡々と書かれている。

書かれていることは結構多岐に渡っていて、よくある時間を味方につけて複利をいかせてという話とか、80%負けても残りの20%で勝てばいい話とか、そんなようなことが書いてある。個人的にささったのは裕福になる方法は無数にあるけど、それを維持するのは別の問題という話。富を築くには収入や投資リターンはほとんど関係なく、結局貯蓄率が大きく影響する、という話。

自由を手に入れる

いいなと思ったのがお金を手に入れる目的のところ。お金がもたらす最大の豊かさは自由だという。今日も思い通りに過ごせるぞという自由こそ、お金から得られる最大の効用だ。人生の幸福感に寄与するのは、自分が人生をコントロールできてるという感覚だそうで、確かにこれは自分の経験とも一致している。だから、高い収入を得るために自分の人生をコントロールされてしまうのは本末転倒なのでは?と、筆者は述べる。

あと、著者は目的のない貯金を推奨している。車を買うため、教育資金のため、住宅購入のため、もちろんそういった目的のために貯蓄をすることはいいけども、目的のない貯金も大いに歓迎されるものだ。むしろ、目的のない貯金こそが自由をもたらすからだ。とりあえず貯金しよう、という気にさせてくれる。

感想

全体を通して、なるほどと思えることが書いてあって、お金に対する考え方が少し明確になった気がする。自分も自由に関してはその通りだと思ったし、そのために目的のない貯金を増やそうかなとも思った。具体的な投資方法とかはそんなに述べてなくて、控えめに人それぞれだよと書いてあってすっきりしていていい。

金持ち父さん貧乏父さんよりも絶対役に立つし、特に若い人は時間を味方につけることができるから、この本を読むといいんじゃないだろうか。ゆっくり読んで2〜3日で読める文量だし、当たり前のことしか書いてないかもしれないけど、けっこうおすすめです。

キャリアの安定について

少し前に大学生を相手に「キャリア」について講義する機会があった。

大学の頃にお世話になった先生から「学生相手に話してみない?」とお誘いを受け、最初は「話すことあるかなー」と思ったけど働き始めて10年を振り返ってみればそれなりに話ができるかもと思って引き受けた。

講義ではキャリアについて、いくつかテーマを挙げて話をしたのだが、今回はその中から「キャリアの安定」について話したことを記録しておく。

安定したキャリア

「安定したキャリア」と聞いて思い浮かべるのはどんなものだろうか? 多くの人、特に学生が思い浮かべるのは「公務員」や「大企業」ではないだろうか。 就活で「安定志向」という単語を耳にしたとき、「ベンチャー企業」や「中小企業」を指すことはほとんどない。大抵、大手企業を目指す人のことを指すだろう。

ただ、自分はこの「安定」について違った意見を持っている。

キャリアの安定は多くの人が想像するほど企業の影響を受けない。 それよりも、個人のスキルや経験によるところが大きい(もちろん、0対100ではないが)。 だから、組織としての安定性が高い大企業に勤めていても、よくよく考えたら個人のキャリアは安定していない、ということが多々あると思っている。

ここで、そもそも安定とは何かという問題が浮かび上がってくるが、結局のところ何が起こっても飯を食っていけるか、の一言につきると思う。 何か不足の事態があっても生活資金を稼ぎ続けられることだ。 だから、ビジネスで一発あてて大金持ちになりたいとか、飯が食べられなくても好きな仕事だけをして生きていきたいという極端な例は今回の議論には含んでいない。 あくまで、安定してそれなりの生活費を稼いでいくことの話をする。

ベンチャーは安定?

こういう話をすると、じゃあ人数の少ないベンチャー企業に行ったり、売上規模の小さい中小企業にいくことが安定なのか、という議論になる。

もちろん、従業員数や資本金の大小と平均年収は明らかに比例しており、待遇に差があることは疑いようのない事実だ。 ただ、その待遇を安定して維持できるかという点はまた別の問題だろう。 昨今、大企業で好業績にも関わらず早期退職希望を募るケース(実質的な退職勧奨)が増えてきているし、新型コロナのパンデミックの影響を受けて一気に業績が悪化し、社員の待遇を大幅に下げる例も少なくない。

こういうとき、大手企業に入って安定していたと思っていた自分のキャリアが思ったほど安定してなかったと思った人は多いのではないだろうか。 逆に安定とはほど遠い会社にいたけど、いつでも飯が食っていけるという意味で安定している人も大勢いる。

結局、所属する会社はあまりあてにならないということだ。 人数の少ないベンチャー企業でも価値のあるスキルが身につけられれば、会社が潰れてもすぐに次が見つかるだろうし、逆に大企業でも求められる能力を身に付けなければ意外と簡単に路頭に迷うことになる。

無意味なラベル

大手企業、ベンチャー企業。 もちろん、それぞれの傾向・特徴はあるからそれは生かすべきだろう。 実際、大企業は滅多なことでは潰れないだろうし、ベンチャー企業は若いうちから実務経験がつめることが多い。 ただ、そのことが自分のキャリアの安定と本当にリンクしているのかをきちんと考えてほしい。

安定よりも成長を求めてベンチャー企業に行く。 成長よりも安定を求めて大企業に行く。 そういう思考で止まってしまうのは危ない。 成長機会のないベンチャー企業は思ったよりもたくさんあるし、若いうちから素晴らしい成長機会を与えてくれる大企業は意外と多い。

ベンチャー企業や大企業というラベル、それ自体にはそれほど意味がないと思う。 そういうラベルは頭の片隅に置いておく程度にして、それぞれの環境が何をもたらし何が得られるかを考え、キャリアを作っていってほしい。

安定は必要?

でも、そもそも安定は必要なのだろうか。

もちろん人それぞれではあるが、キャリアが安定していると逆説的に積極的にリスクテイクができるようになる。 「最悪、転職してやりなおせるし」と自信が持てれば、売上ゼロのスタートアップに参画して一発勝負して夢を追いかけこともできる。 もちろん、勝負をしないでそのままの意味で安定した道を歩むこともできる。

本当の意味でキャリアの安定を求めていけば、より選択肢のある自由なキャリアプランニングができるようになる。

人生の中で大きな位置を占めるキャリアにおいて自由になることは、とても良いことなのでお薦めですよ。

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と、まぁ、こんな話を大学生にした。

偉そうに書いたけど、自分がキャリアで自由になったとは思ってない。 ただ、そういうことを考えるようにしているという話。

最近だとベンチャーじゃなくて、スタートアップって言いそうだな。

『7つの習慣』を読んで

今年も月に一冊くらいのペースで本を読んで、ブログに感想を書いていこうと思う。

今年最初の本は『7つの習慣 -人格主義の回復-』。 去年の12月から読み始めたんだけど、FP の勉強があったりしてずいぶんとかかってしまった。

7つの習慣は90年代に出版されてベストセラーになった本(原著は89年の出版だね)。 確か父親の本棚にもあったな。 ずっとビジネス本だと思ってたけど読んでみたら自己啓発系の本だった。

自己啓発本をそれなりに読んだことがあると話題としてはそれほど目新しいことはないのだけど、ベストセラーなだけあってとてもいいことが書いてある。 「よし、やってみるぞ」というやる気も上手に刺激してきて、さすがだなーという感想。 ただ、文量が多すぎるのがちょっといまいちなところかな。 同じ話を5回はしてるんじゃないかな?って感じで、端的にまとめてくれるとありがたいのだけど。

7つの習慣はそれぞれ、

  • 第1の習慣:主体的である (Be proactive)
  • 第2の習慣:終わりを思い描くことから始める (Begin with the end in mind)
  • 第3の習慣:最優先事項を優先する (Put first things first)
  • 第4の習慣:Win-Win を考える (Think Win/Win)
  • 第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される (Seek first to undedrstand, then to be understood)
  • 第6の習慣:シナジーを創り出す (Synergize)
  • 第7の習慣:刃を研ぐ (Sharpen the saw)

というもの。

1~3の習慣は「私的成功 (Private Victory)」、すなわち個人的な成功に繋がるもの。 4~6の習慣は「公的成功 (Public Victory)」、すなわち他人とのコラボレーションの成功に繋がるもの。 そして、第7の習慣で 1~6 の習慣を強化していく。

それぞれの詳しい話はよくまとまってるサイトが他にたくさんあるからそちらへ。

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で、結局、これらの習慣を実践する目的とは何だったのか。 本から引用すると、

7つの習慣は人間が効果的に生きるための習慣である。

ということらしい。

原題は "The Seven Habits of Highly Effective People" だから、この効果的 (Effective) というのが重要そうだ。 効果的とは何か。

本の中では成果 (Production) と成果を生み出す能力 (Production Capability) のバランスを取ることが効果的と定義されていた。

要するに成果を出しつづけるための習慣、といったところだろうか。 そういう書き方をするととてもスパルタな感じになってしまうけど、本の内容はそんなことなくて、どちらかといえば人としてまっとうに生きる、みたいなことがけっこう書いてある。本ではそういう生き方を人格主義(Character Ethic)と呼んでいる(副題にもあるね)。

最近、人としてまっとうに生きるのって大事だなと思うようになってきて、こういうちょっと説教っぽい本も悪くないなと思える。 きっと若い頃だったら途中で読むのやめてたと思うけど、ある程度素直に受け入れられるようになったのは、よくもわるくもいろいろな経験を積んだからかな。

3級FP技能検定を受けたよ

1月23日に3級FP技能検定を受けました。

自己採点結果は、

  • 学科試験:55/60(91.6%)
  • 実技試験:19/20(95%)

でした。6割程度の得点で合格するようなのでおそらくは合格だと思います。

目標は9割得点だったのでギリギリ達成。 『国民年金の付加保険で繰り上げ・繰り下げ受給の増減率が適用されるか』みたいな初見の問題がちらほらあって落としてしまった。 欲を言えば学科の方はもう少し取りたかったけど、勉強した範囲のところはほぼノーミスだったのでよしとしよう。

自分はこの本で勉強しました。 Kindle に対応してる教科書があまり無くて選択肢が少なかったけど、この本は内容が絞ってあってちょうどよかった。 テキスト1周やってあとは問題集3周くらいしたかな。

FP3級 過去問道場🥋 (学科)【完全解説付】|FP3級ドットコム

あと、このサイトにめちゃくちゃお世話になりました。 会員登録(無料)すれば過去の正答率とかも見れてめちゃくちゃ高機能。 過去問も解説で網羅されてる充実っぷり。 これはお金取ってもいいのでは?と思えるレベルでおすすめです。

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このままちゃんと勉強していけば5月試験で2級も受かると思うけど(正答率6割で受かるみたいだし)、一旦 FP の勉強はこれでおしまい。 3級だとほんとに概要を知るだけだけど、単に生活に役立つ知識をつけるだけなら3級をちゃんと勉強すれば十分という感じ。 各種年金の支給要件とか、保険の種類とか、相続とか知らなかったから勉強になった。 自分に関わることは部分的には知ってても網羅的に知る機会はなかなかないからね。

次は証券アナリスト基礎講座をやろうかな。 基礎講座なので簡単そうだけど、基本的な金融商品の知識を得るにちょうどよさそう。 公式サイトで「目安の勉強時間は30時間程度」と書いてあるので3月末までに取得が目標かな。

3級FP技能検定を受けるよ

明けましておめでとうございます。

唐突ですが二週間後に 3 級 FP 技能検定を受ける予定です。 網羅的に生活に必要なファイナンスの知識を身に付けたいなと思って申し込んだ。 もともと人よりはそこらへんの知識はあるほうだとは思うけど。

あとは単に、久しぶりに試験に向けて勉強したくなった。 意識的にこういうことで頭を使っていくようにしないと衰えていく一方だ。 特に記憶力がどんどん落ちている気がする。あらがっていきたい。

問題集などをやってみた感じ受かるだけならかなり簡単そう(合格率8割超えるみたいだし)。 なので、9割得点を目指してがんばります。 そのためというわけではないけど勉強のために iPad Air を買って、それで勉強するのが楽しくていい感じ。

受かったら次は証券アナリスト基礎講座やろうかな(Twitter で誰かがおすすめしてた)。

証券アナリスト基礎講座|日本証券アナリスト協会

そのあとは今までちゃんと経済学を学んだことがなかったので、初学者向けの経済学の教科書を一冊やろうかな。 今年はそこらへんの分野の勉強を主にやってみる年にしたいと思います。

『Team Geek』を読んで

『Team Geek』を読みました。11月の読書。

ちょっと昔に出た本でそれなりに有名な本。 一度、ざっと読んだことはあったけど改めて読み直してみた。

ソフトウェア開発におけるチーミングに関していろいろなことが書いてある。 けど、一番大事なことはチームで働くときに常に次のポイントを押さえておく、というところだろう。

謙虚(Humility)

世界の中心は君ではない。君は全知全能ではないし、絶対に正しいわけでもない。常に自分を改善していこう。

尊敬(Respect)

一緒に働く人のことを心から思いやろう。相手を1人の人間として扱い、その能力や功績を高く評価しよう。

信頼(Trust)

自分以外の人は有能であり、正しいことをすると信じよう。そうすれば仕事を任せることができる。

頭文字を取って HRT。

自分はなんとなく HRT を大事にしてたつもりだけど、改めて意識しながら日々の仕事をしていこうと思った。

『読書について』を読んで

ショーペンハウアーの『読書について』を読みました。 10月の読書。

ショーペンハウアーの読書に対する考え方が述べられた本。

いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに鵜吞みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識のほうが、はるかに価値がある。

たくさんの本を多読するのではなく、良書を少しだけ読めと言う。 そもそも、読書自体が自分の頭で考えるのではなく他人の心をなぞるだけでほぼ無価値だ、とまで主張する。

自分はたくさん本を読む方じゃないから、ショーペンハウアーみたいな著名な哲学者がこういうことを言っていると少し勇気づけられたけど、どれくらい信憑性のある話なのかなぁと思った。 こういう歴史的に著名な人の主張って、現代の考え方に照らし合わせるとほとんど根拠が示されてないんだよなー、と思ったり。

根拠の提示された主張だけが価値があるというわけでもないのだろうけど、現代のエビデンス主義に浸かってしまった自分としてはこういう歴史的な思想書を読むとついついそこが気になってしまった。

(c) The King's Museum